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28/04/2017
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第21回 日・EU定期首脳協議 共同プレス声明

EU News 477/2013

平成25年11月19日、東京

(仮訳)

1 安倍晋三日本国内閣総理大臣,ヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会議長,ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長は,2013年11月19日,東京において,第21回日EU定期首脳協議を行った。協議では幅広い分野における日EU間及びグローバルな課題について,親密かつ率直な意見交換が行われ,日本とEUが,民主主義,人権,男女平等,法の支配といった共有した基本的価値及び原則,安全保障上の共通の関心,そして経済的な深い相互依存により緊密に結束していることが示された。日EU首脳は,急激に変化する世界にあって日EUが平和と繁栄の促進に特別な責任を有していることに留意しつつ,日EU関係をそれに沿って強化し続ける決意を表明した。

日EU関係の新たな段階

2 日EU関係は,1991年の日EC共同宣言及び2001年の日EU協力のための行動計画以来,協力の範囲と度合いの両面において着実に深化してきた。しかしながら,世界規模で起きている著しい変化が,日EU関係を包括的に更に強化し,より高くより戦略的な次元に引き上げることを求めている。そのような共通の認識の下,日EU首脳は,次の方法により日EU協力の地平を拡大していくことを決定した。

Ⅰ.相互利益のための政治及び経済的潜在力の十分な実現
3 日EU首脳は,4月に交渉開始され現在進行中の,包括的な基礎に基づく戦略的パートナーシップ協定(SPA)及び野心的な経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)の交渉の継続的な進展の重要性を強調した。両協定が将来のパートナーシップのための長期的な基盤として極めて重要であるとの共通認識の下,日EU首脳は,両協定の可能な限り早期の締結に向けた決意を改めて表明し,関係大臣/欧州委員に対して,交渉を一層進展させるよう指示した。このため,関係大臣/欧州委員は,物品貿易,サービス貿易,調達における野心的な市場アクセスのオファーを遅滞なく提示し,また,非関税措置及び鉄道の課題に取り組む。

Ⅱ.世界の成長と安定の支援
4 日EU首脳は,日EU双方における投資家の信頼回復の兆しを歓迎した。日EU首脳は,貿易及び投資,並びに研究及びイノベーションは,持続的な成長の基礎であることを改めて表明した。日EU首脳は,日EUの互いの市場における各々による投資の質が高いこと,並びに研究及びイノベーション協力の強化の潜在性を認識した。この観点から,日EU首脳は,日EU間の投資の機会の拡大を期待し,また,研究及びイノベーション分野におけるパートナーシップの更なる発展に向け取組むこととした。

5 日EU首脳は,新興市場にかかる圧力や先進国における経済の回復傾向を含む,世界経済の進展を確認した。日EU首脳は,世界経済の回復を支援し,持続可能でバランスのとれた,包摂的な成長を確保するために,日本とEUによってとられている重要な取組を認識した。安倍総理は,自らの「三本の矢」の経済政策,及び第三の矢である日本再興戦略の継続的な実施について説明した。EUは,差別化され,成長に資する財政健全化の包括的な経済政策戦略,及び成長と投資を促進するための確固たる行動について説明した。双方は,成長及び中期的な財政健全化のためのG20のコミットメント達成に向けた,各々の政策措置の重要性を強調した。また,G20でのコミットメントの文脈で,日EU首脳は,金融規制のための強化された規制協力の重要性を強調した。日EU首脳は,日本とEUが,G20プロセスにおいて,重要で相互に支え合う役割を果たすために,引き続き緊密に連携していくことを確認した。

6 日EU首脳は,WTOの信認を維持するために,貿易円滑化,農業,及び後発開発途上国の関心事項を含む開発に関し,バリで開催される第9回WTO閣僚会議(MC9)での前向きな成果の実現に向けて,協力して取り組むことを約束した。この観点から,日EU首脳は,バランスのとれた,包括的なドーハ・ラウンド交渉の成功裡の妥結に向けたステップとして,バリ・パッケージへの取組を速やかに前進させるとのコミットメントを表明した。日EU首脳は,MC9前までのITA拡大交渉の妥結に向けた更なる努力の重要性を強調した。また,日EU首脳は,現在行われている新サービス貿易協定(TiSA)交渉における協力強化の重要性を強調した。日EU首脳は,あらゆる形態の保護主義に対抗する決意を再確認した。

Ⅲ.グローバルな利益を増進するためより一層緊密に協力
7 日EU首脳は,両者合わせて世界のGDPの30%と,DAC加盟諸国のODA総額の60%を占める日本とEUがグローバルな利益を増進する責務に留意しつつ,世界の平和と安全の基盤であるグローバルな挑戦に取り組み,以下の課題に協力する決意を表明した。

8 男女間の平等は,人権であり民主主義の極めて重要な要素であり,競争力及び経済成長に密接に関連していること,また,女性の才能と潜在力を十分に動員することは欧州2020戦略の目標達成のために主要な側面であることを再確認しつつ,EU首脳は,安倍総理が9月の国連総会で発表した,「女性が輝く社会」を作ることを目指した日本の取組を歓迎した。

9 日EU首脳は,人間の安全保障の側面が不可欠であるミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた努力を強化する決意を再確認するとともに,ポスト2015年開発アジェンダに関する世界的な議論に対する双方の貢献を緊密に調整する相互の決意を表明した。日本とEUの開発政策の考え方が一層収斂していることを踏まえ,日EU首脳は開発政策に関する日EU対話の強化を提案した。また,日EU首脳は,日本国際協力機構(JICA),開発協力総局(DEVCO),人道支援・市民保護総局(ECHO)といった日EU双方の開発・人道機関に対し,包摂性及び強靱性に適正に配慮した形で開発効果を一層高めるため,連携を加速することを奨励した。

10 日EU首脳は,全ての国,とりわけ開発途上かつ脆弱な国家に対する経済発展等への悪影響を考慮し,気候変動に関する政府間パネルが最近発出した報告書も考慮し,気候変動において行動する緊急性を強調した。ドーハで達成した進展を基に,日EU首脳は,締約国がしかるべき時期にプレッジを提示し,評価を受ける2015年に向けた道筋を付けるために,ワルシャワにおける第19回気候変動枠組条約締約国会議の成功に向けて緊密に協力する決意を再確認した。この文脈で,日EU首脳は,2014年9月の国連気候変動サミットへの潘基文国連事務総長からの招待を強く歓迎し,全ての国が時宜を得て国内手続きを行うことが重要であり,それが全ての締約国に適用される議定書,法的文書もしくは法的拘束力を持つ合意結果の2015年採択に向けた交渉に対する主要な貢献となることを強調した。日EU首脳は,2020年までに主導する国々の一部として日・EUが引き続き主導する形で,世界の平均気温の上昇を産業革命以前のレベルから摂氏二度以内におさえるために,世界の温室効果ガスの削減に視野を入れた,2020年までの行動を通じたものも含めた全ての締約国による世界の温室効果ガスの大幅削減が必要であることを確認した。その関連で,日EU首脳は,プレッジされた排出削減量と科学的に必要とされる量の間に存在する隔たりを減らすための更なる緩和努力に向けた国際的協力イニシアティブの貢献を強調した。特に, HFCの段階的削減が速やかに進展することの必要性,及び,これがモントリオール議定書の文脈において議論される案件の一つとして十分に検討されることの必要性を強調した。

11 日EU首脳は,安定的,持続的かつ低廉な価格で安全なエネルギー供給の達成は,引き続き日EU双方が直面する主要な課題であるとの認識を共有した。日EU首脳は,第4回日EUエネルギー対話の成果に基づき,電力市場の自由化,原子力規制枠組及びエネルギー分野の研究に関し,日EU間の協力を進展させる必要性を強調した。日EU首脳は,2011年の日EU定期首脳協議共同プレス声明付属文書において詳細に記載されているとおり,原子力安全に関する対話及び協力の強化の必要性を強調した。さらに,日EU首脳は,需給原理に基づく透明で流動性のあるグローバルなガス市場の発展の促進を目的としたガスに関する協力の進展を歓迎した。日EU首脳はまた,排出削減への長期的な野心を維持しつつ,低炭素政策,核融合エネルギーの実現に向けたイーター(ITER)計画及び幅広いアプローチ活動,並びにクリーンエネルギーの促進及びエネルギー効率の向上に関する協力を強化する意思を表明した。

12 日EU首脳は,2012年の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の成果の重要性に留意しつつ,決定事項の速やかな実施の必要性を強調するとともに,単一の包括的なポスト2015年開発枠組みに対する持続可能な開発の統合を歓迎した。日EU首脳は,グリーン・エコノミー政策実施に対する決意を確認するとともに,例えば低炭素技術などのクリーン・テクノロジーの促進におけるそれぞれの強みを踏まえた包摂的なグリーン成長に向けた協力の重要性を強調した。

13 日EU首脳は,特に2013年3月の国土交通大臣と国際協力・人道支援・危機対応担当欧州委員の間の協力強化に関する書簡交換,同年7月及び11月に行われた有意義な日EU防災対話など,防災の分野における日EU協力の継続的な強化を歓迎した。両首脳は,自然災害又は人為的災害の影響に対する強靱な社会を作るために,災害リスク削減の分野における国際協力を強化する重要性を改めて表明するとともに,2015年3月に日本で開催される第3回国連防災世界会議に向けたポスト兵庫行動枠組の準備のための更なる具体的措置,及びその成果をポスト2015年開発アジェンダに関する議論において考慮に入れることを奨励した。また,両首脳は,人道主義の原則に基づき,また,被災国を支援するために調整役を果たす国連人道問題調整部(UN OCHA)とともに,災害や危機の被災者のニーズのみに基づく人道支援の提供を更に促進し,便宜を図ることを目的に,協力を強化する意思を共有した。

14 日EU首脳は,2015年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議とそのプロセス,その結果としての全ての人にとってより安全な世界,及び包括的核実験禁止条約の早期発効への実質的な貢献を視野に,軍縮・不拡散を強化するための協力を更に強化する重要性を再確認した。また,日EU首脳は,通常兵器の国際貿易を効果的に規制する共通基準を確立した重要な一里塚として, 2013年4月の国連総会における武器貿易条約の採択を歓迎し,同条約の可能な限り早期の発効と効果的な実施を追求する決意を表明した。日EU首脳は,とりわけ不拡散に関する制裁政策における協力の重要性を確認し,特に緊張状態にある地域の平和,安全及び安定の維持を考慮しつつ,武器及び汎用品・技術の責任ある輸出管理への決意を再確認した。

15 日EU首脳は,2011年の定期首脳協議の成果に従い,化学,生物,放射性物質及び核(CBRN)のテロの危険の軽減に関する協力が進展していることを歓迎するとともに,対話や共同事業の実施を通じ,関係機関間の協調が一層強化されることへの期待を表明した。

16 日EU首脳は,核セキュリティの更なる強化の重要性を強調するとともに,既に達成された進展を歓迎した。世界における核セキュリティの強化を目的とした第三国に対する人的,物的,資金的な支援提供において,日本とEUは主導的な存在である。この文脈で,2014年3月にハーグで開催予定の核セキュリティ・サミットは,核テロリズムの防止を目的とした協力と手段を強化するために重要な会議となる。また,日EU首脳は,過去の核セキュリティ・サミットで約束した事項の完全な実施に向けて取り組む決意を表明した。

17 日EU首脳は,成長と競争力に貢献し,共通の社会的課題に対処するに当たり,日EU科学技術協力の戦略的な重要性を強調した。日EU首脳は,日EC(欧州共同体)科学技術協定発効以来の2年間に達成された,希少原料,航空,情報通信技術などの主要な相互関心分野における著しい進展と,第1回共同研究プロジェクトの成功裏の開始を歓迎した。日EU首脳は,日EU科学技術協力の潜在力を解き放ち, 研究・イノベーション分野におけるパートナーとして更なる協力を促進するためより一層の努力を要請した。この目的を達成するため,事務レベルにより,今後の道筋を探るための会合を次回首脳協議までに開催する。日EU首脳は,日本におけるEUフレームワークプログラムのためのナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)の指名を,日本の関係者のEUのホライゾン2020プログラムへの参加を円滑化する重要なステップとして歓迎し,NCPシステムの活用により日EU科学技術協力の新たな地平を開拓する意欲を述べた。

18 日EU首脳は,宇宙空間への自由なアクセスと宇宙空間の持続可能な利用を確保することの重要性を確認し,この分野における日EU協力の重要性を強調した。日EU首脳は,宇宙活動に関する国際行動規範が早期に必要であり,そのため日本とEUが多国間協議の場において緊密に協力していくことで意見が一致した。宇宙協力をさらに強化するために,日EU首脳は,日EU宇宙政策対話の立ち上げを決定した。

19 日EU首脳は,経済及び社会的発展を促進するに当たり,オープンで安全なサイバー空間を維持するための課題が増大していることを強調した。また,日EU首脳は,オンライン上の人権を保護し,また,インターネットへの安全で信頼できるアクセスに向けた能力構築を支援する必要性を強調した。日EU首脳は,この分野における定期的な対話の立上げの可能性を検討するため,専門家に協議させることを決定した。

20 日EU首脳は,2005年の国連首脳会合で採択された,主要機関の改革を含む国連機構改革に関する約束を完全に実施する重要性を強調した。国連事務総長主導の管理改革に向けた取組への力強い支持を再確認しつつ,日EU首脳は,国連行財政分野において協力を強化する。

21 日EU首脳は,水銀に関する水俣条約が,10月に熊本で開催された外交会議で,90か国以上の国々及びEUにより署名されたことを歓迎した。水銀管理を包括的に行うための,初めての法的拘束力のある国際文書としての同条約の大きな重要性を念頭に置きつつ,日EU首脳は,可能な限り早期の条約発効と効果的な実施へ向けて努力する決意を表明した。

Ⅳ.地域の安全保障を強化するため共通の基盤を拡大
22 日EU首脳は,安全保障分野における日EU協力を増進する決意を再確認した。日本は,国際協調主義に基づき,地域及び世界の平和と安定に対して,これまで以上に積極的に貢献していく決意を強調した。この文脈において,日本は,国家安全保障会議の設置,初の国家安全保障戦略の策定,防衛大綱の見直し,日本による集団的自衛権の行使を含む安全保障の法的基盤の再検討に言及した。EUは,日本が地域や世界の平和と安全により積極的に貢献するとの展望とその目的に向けた取り組みを歓迎した。日EU首脳は,第一歩としての文民専門家間や自衛隊とCSDPミッションの要員間での現場での情報共有を含め,世界の安全保障,危機管理,平和維持への努力における日EU間の連携強化の機会を探求することへの関心を強調した。

23 東アジアと欧州の安全保障は密接に関連しており,また,東アジアにおける安全保障環境が不確実性を増しているとの認識の下,日EU首脳は,東アジアの海域を含め,現在の緊張状態が仮にこのまま続き,さらに悪化すれば,地域の安全保障,安定及び繁栄に対して悪影響をもたらしかねないとの懸念を共有した。日EU首脳は,全ての関係国に対して,こうした緊張関係に対処するため,外交的に働きかけることを求め,緊張緩和に向けた努力が結実することへの期待を表明した。EUは,日本政府がこの方向で既に行っている取組を歓迎した。日EU首脳は,緊張を高めるようないかなる一方的な行動も回避し,威圧的な行為を放棄し,代わりに,緊張を緩和し相違を建設的に解決するために関連する地域枠組みが果たす重要な役割を強調しつつ,法の支配の原則に基き,平和的,外交的,協力的な解決策を追求する必要性を強調した。

24 日EU首脳は,世界の全ての人々にとっての公共財として,海洋が自由で開かれた安全なものであるべきことを強調し,国連海洋法条約を含む国際法に基づきこれら原則が支持されることの重要性を強調した。とりわけ,南シナ海については,2002年の南シナ海行動宣言で策定された基本原則を想起し,世界的に認知されている国際法に従って,地域における紛争が平和的に解決されることの重要性を強調し,2013年9月には関係国による行動規範に関する公式協議が発足したことに留意するとともに,規範に関する更なる進展を奨励しつつ,日EU首脳は,全ての関係国が地域の平和と安定の強化に向けて持続可能な解決策を追求するよう要請した。

25 日EU首脳は,地域における平和,安定及び繁栄に対する大きな貢献として,ASEAN統合を支持する力強い決意を再確認した。日EU首脳は,アジアにおいて力強く効果的な多国間安全保障機構を構築する重要性を強調し,ASEAN地域フォーラム(ARF)において積極的かつ建設的な役割を果たす決意を改めて表明した。日本は,EUが東アジア首脳会議に対して,より大きな関与を行う意志を継続的に有することを歓迎し,EUが同地域における協力の制度的構造の進展に貢献する意欲を有していることに留意した。

26 日EU首脳は,過去2年間のミャンマーにおける民主的改革の実質的な進展と,ミャンマー政府がその方向性に完全に従った形で改革を続けるというミャンマー政府の約束を歓迎した。また,日EU首脳は,支援の提供及び責任ある貿易と投資に向けた新たな可能性の創出を含め,国際社会がミャンマーとの関与及び対話をより強化する方向に進んだことに満足をもって留意した。また,日EU首脳は,国家戦略に合致した形で,更なる調整と調和を促進するため,国際社会がミャンマーに関与するとの認識を共有した。さらに,日EU首脳は,ミャンマー政府によって設置,実施されている開発協力の分野におけるドナー調整プロセスを歓迎し,このプロセスを全面的に支持するとの決意を表明した。日EU首脳は,特に,2015年に予定される信頼に足る包摂的選挙に向け,現在進行中のミャンマーにおける改革を改めて検討するプロセスを支持した。日EU首脳は,ミャンマー政府による全ての政治,民族,市民社会の主体との広範で包摂的な関与を通じるものも含め,ミャンマーにおける持続的な平和,国民和解及び不可逆的な改革を確保するため支持を継続する必要性を強調した。この文脈で,日EU首脳は,ミャンマー政府と全ての関係少数民族に対して,持続的な和平合意,紛争により影響を受ける人々への妨げられないアクセス及び地域間の暴力を防止するため,国民和解プロセスを進めることを奨励した。

27 日EU首脳は,ウラン濃縮計画を含む北朝鮮の核・ミサイル開発計画や,寧辺の核施設を再整備・再稼働する意図を表明した最近の声明に対して,強い懸念を表明した。北朝鮮によるミサイル発射及び2013年2月の3回目の核実験を非難しつつ,日EU首脳は,北朝鮮に対し,関連する全ての国連安保理決議,NPT体制下のIAEA包括的保障措置協定,及び2005年六者会合共同声明に基づく約束を遵守するよう再度強く要請した。日EU首脳は,北朝鮮に対し,核のない朝鮮半島における持続的な平和と安全保障に向けて取り組むため,すべての核兵器及び既存の核計画を完全な,検証可能な,かつ不可逆的な方法で放棄し,国際社会及び、特に六者会合メンバー国との間で建設的な関与を再開するよう要請した。また,日EU首脳は,拉致問題を含む,北朝鮮における市民権,及び,政治的,経済的,社会的,文化的権利の組織的かつ広範囲な侵害が継続していることに対して,引き続き深刻な懸念を表明した。日EU首脳は,長期間に及ぶ議論がこれまで拉致問題の解決をもたらしていないことを想起し,可及的速やかにこの問題を解決する必要性について一致した。日本とEUは,日EU共同のイニシアティブにより,2013年3月の国連人権理事会で設置された,北朝鮮における人権に関する調査委員会の今日までの活動を強く支持する。日EU首脳は,同調査委員会による直近の口頭報告を歓迎し,これまでの取組を賞賛した。日EU首脳は,同調査委員会の最終報告書の包括性が担保されるよう,北朝鮮が同調査委員会の作業に協力するよう共に求めた。

28 日EU首脳は,2014年以降も平和で安定し自立したアフガニスタンへの決意を再確認した。日EU首脳は,7月3日にカブールで開催された「相互責任に関する東京フレームワーク(TMAF)」高級事務レベル会合における進展に留意するとともに,権限移譲から「変革の10年」に向けた進展に伴いアフガニスタン政府を支援する決意を確認した。日EU首脳は,アフガニスタン大統領選挙後に英国とアフガニスタンによって共催される予定の第1回閣僚級TMAFフォローアップ会合の前までに,アフガニスタン政府がTMAFにおける指標を達成するために多大な努力を払うことが期待されていることに留意し,インセンティブ措置を通じた支援を含め,国際社会全体がアフガニスタン政府の努力を支援する決意を再確認した。日EU首脳は,アフガニスタン及び周辺諸国の安全と安定を促進する努力の一環として現在行われている国境管理に関する日EU協力を歓迎するとともに,2014年3月にタジキスタンで開催予定のタジキスタン・アフガニスタン国境管理に関する日EU会合の成功への期待を表明した。

29 日EU首脳は,イランによる核開発計画が引き続き深刻な懸念の原因の一つであるとの考えを共有した。日EU首脳は,イランに対し,国連安保理の関連決議とIAEA理事会決定に基づく全ての義務を遵守するよう強く要請するとともに,国際社会との問題解決を奨励した。日本は,EU上級代表が率い,デュアル・トラック・アプローチに基づくEU3+3による継続中の外交努力に対する支持を表明した。EUは,伝統的な友好関係に基づく,イランに対する日本の積極的な関与を歓迎した。日EU首脳は,イラン核問題の平和的解決に向けた意欲を強調するとともに,その目的に向けたIAEAによる努力を歓迎した。日EU首脳は,イランとIAEAとの間における協力のための枠組みに関する共同声明の署名を歓迎した。イランが,全てのIAEAの懸念に早急に対処すること,及び同国の核開発計画に関する軍事的側面の可能性を含む,現在及び過去における未解決の課題を解決することが重要である。

30 日EU首脳は,シリア及び周辺諸国における人道状況の悪化,そして数百万人のシリア国民に苦しみをもたらし続けている受け入れがたいレベルの暴力に対して,強い懸念をもって留意した。宗派間の暴力の波及とともに,これらの問題が地域全体の安定を脅かしている。日EU首脳は,9月27日の国連安保理決議に基づく化学兵器の速やかな廃棄,及び和平会議(ジュネーブ2)に通じる政治プロセスへの紛争当事者の意味ある関与を求めた。日EU首脳は,アサド政権が一義的な責任を負っている広範囲かつ組織的な人権及び国際人道法の侵害に対する懸念を表明するとともに,全ての当事者に対して,シリア全土への人道的アクセスが妨害されることなく確保されるよう要請した。日EU首脳は,シリア内外の難民に対する支援,及び新しいシリアのための国づくり支援を含め,人道支援を行う力強い決意を確認した。

31 中東和平プロセスにおいて,新たな体系的かつ実質的な努力が緊急に求められていることを踏まえ,日EU首脳は,イスラエル・パレスチナ間の全ての主張を解決し,両者の紛争の持続的解決を実現するため,2013年7月に両者間の交渉が再開されたことを歓迎した。二国家解決に基づく包括的に交渉による包括的な和平を通じて,パレスチナの独立国家と主権への熱望、そしてイスラエルの安全に対する熱望が満足されるまでは,持続可能な平和はない。

32 日EU首脳は,「アラブの春」をきっかけとして起きた民主主義へ向けた重要な動きとともに,過去2年にわたり多くの北アフリカや中東諸国において重大な変化が起きていることを想起した。他方で,両首脳は,移行プロセスが成功裏に完結するためには,未だ多くの困難を乗り越えなければならないことに留意し,日EUはともにこれらの改革への支援を強化し,関係国の政府,政治的及び社会的勢力に対して,安定的で基盤がしっかりとした民主主義と経済に向けた努力を継続するように奨励した。この関連で,日EU首脳は,エジプト情勢に懸念を表明し,全ての当事者に対して平和的に問題を解決するよう要請するとともに,エジプト当局に対して包括的な政治対話に関与するよう奨励した。また,日EU首脳は,リビア全土で暗殺事件やテロ攻撃が依然として続いており,10月10日にはアリ・ゼイダーン首相が一時的に拉致されるといった事案に裏付けられるとおり,リビアの治安状況が,リビア国民や国家機構にとって深刻な挑戦であり続けていることに対する懸念を表明した。日EU首脳は,リビア当局を支援する決意を強調するとともに,リビア政府と制憲議会が,安定的,包括的で民主的な政治的移行を達成するため,リビアを率いて協働する必要性を強調した。

33 日EU首脳は,ナイロビのウェストゲートセンターやアルジェリアのイナメナスにおける事件を含む,最近発生した卑劣なテロ攻撃を強く非難した。こうしたテロ攻撃は,地域の不安定化が,日本及びEUの権益に直接的な脅威をもたらす可能性があることをいま一度明確に示した。この関連で,日EU首脳は,緊急時に当局間で協力を強化する重要性,この文脈において,情報交換の強化に向けた選択肢を検討することで一致した。日EU首脳は,テロの脅威の高まりと,テロとの闘いやテロ防止に向けた協調的行動に関する日EU間の協議を歓迎した。アフリカの角,とりわけソマリアにおける攻撃については,日EU首脳は,ソマリア連邦政府が,他の利害関係者とともにこれまで達成した政治及び安全保障上の進展を歓迎した。また,この進展を維持するために,2013年9月16日に実施されたブリュッセル会合において採択されたニューディール・コンパクトの履行に関する決意を再確認した。日EU首脳は,テロ行為を正当化するいかなる試みも断じて受け入れられないことを強調した。日EU首脳は,あらゆる形態のテロを根絶するとの決意を改めて示すとともに,テロの地域的温床の一掃や,テロを助長する要因への対処に向けた国際協力,特に国連のレベルにおける協力の重要性を再確認した。

34 日EU首脳は,マリの大統領選挙が平和裏に実施され,多くの国民の投票があったことを,完全な憲法的かつ民主的秩序の回復に向けた重要な一歩として歓迎した。両首脳は,マリ国内の全ての利害関係者に対し,11月及び12月に実施が予定されている議会選挙が,大統領選挙同様,平和裏に実施されることを要請した。日EU首脳は,マリの国家としての統一性,領土的一体性,国家主権を十分に尊重しながら,マリの持続的復興計画に明記された優先事項に沿った形で,マリ全土における国家の威信,法,及び秩序再構築のための支援への決意を再確認しつつ,新政府が多大な困難に直面していることに留意した。2013年6月に開催された第5回アフリカ開発会議(TICADⅤ)で議論されたとおり,「平和と安定」及び「開発」は,車の両輪である。この点に関し,治安面の貢献は,回復したマリの経済成長及び発展に寄与する前提を提供し,日EU首脳も引き続き支援を続ける。EU軍事訓練ミッションはこの目的に向かって活動しており,目に見える成果を生み出しつつある。日EU首脳は,国連マリ多角的統合安定化ミッション(MINUSMA)に権限を移行したアフリカ主導国際マリ支援ミッション(AFISMA)を通じた,アフリカ諸国を含めた国際社会によるこの地域におけるテロとの闘いへの努力を歓迎し,サヘル地域の安定に向けた国際的支援の重要性を改めて表明した。

35 日EU首脳は,アフリカがグローバルな成長の一極となる潜在性を解き放つために,アフリカ開発におけるパートナーシップを強化する決意を表明した。この関連で,両首脳は,TICADⅤの成果を歓迎し,「横浜宣言2013」及び「横浜行動計画2013-2017」で確認された主要な戦略的アプローチに沿ったアフリカへの関与に対する決意を再確認した。EUは,平和や安全保障などのアフリカと欧州の両大陸に共通の課題や,ガバナンスや人権,包摂的かつ持続可能な成長の追求を含む共通の関心事項に焦点を当てる,2014年4月に開催予定の次回EUアフリカ首脳会議に言及した。日本は,TICADⅤにおける議論が,EUアフリカ首脳会議の成功に良い基盤を提供することへの期待を表明した。

36 日EU首脳は,EU水上部隊(EUNAVFOR)及び日本の自衛隊が参加する作戦を含む国際的な作戦の成功にも関わらず,ソマリア沖や西インド洋における海賊行為や武装強盗が依然として海洋の安全と世界経済への深刻な脅威であり続けているとの認識を共有した。ソマリア及び周辺国における海賊対処能力の強化に当たり,日本とEUは,ジブチ地域訓練センターを利用したジブチにおける日EU双方の事業間の協力の可能性を追求することを含めた協調的アプローチを促進するために,今後も協力を継続する。また,日EU首脳は,海賊との国際的な闘いの有効性を確保するために,全ての国が国際法を完全に遵守することの重要性を認識した。

37 日EU首脳は,西アフリカでは,ギニア湾における海賊,武装強盗及び越境犯罪の脅威が増加していること,及びギニア湾における海上ルートの安全を強化するため,現地及び地域によるこうした脅威に対処する努力が協調的国際支援を受けるに値することに留意した。

38 日EU首脳は,EU近隣の他の地域における持続可能な開発を目的とした政策や計画における協力分野を更に追求する関心を表明した。日EU首脳は,EUの東方パートナーシップの役割及び,日本のこの地域に対する長期にわたる支援及び関与を強調し,東方パートナーシップ対象国の持続可能な民主主義と市場経済に向けた進展に対して支援する決意を改めて表明した。また,両首脳は,西バルカン地域,黒海シナジー及び黒海経済協力機構における更なる協力に対する関心を表明した。

Ⅴ.分野別課題における協力の促進
39 日EU首脳は,日EU経済関係の発展に対する日・EUビジネス・ラウンドテーブル(BRT)の重要な貢献を認識し,関係を一層強化するため,とりわけBRTを通じた,双方の産業界との協力を継続するとの決意を再確認した。日EU首脳は,4月にBRTによって採択された,深くかつ包括的な日EU・EPA/FTAが可能な限り早期に妥結されるべきであるとの提言を歓迎し,BRTが同提言で,「日EU・FTA/EPAは野心的でバランスがとれ,互恵的かつ包括的なものとなるべきであり,日EU間の貿易・投資の拡大,及び両経済圏における雇用創出及び経済成長の促進のため,関税,非関税措置,調達,投資,サービス,競争,知的財産,規制・基準の調和と相互承認を含む規制協力を含む主要な現存する課題に取組むべきである」との要請を改めて表明していることを認識した。

40 日EU首脳は,経済成長を達成すべく日本とEUが産業政策に関する協力を深めることを再確認しつつ,産業政策対話を有用な手段と認識した。また,日EU首脳は,任意規格,強制規格,及び適合性評価手続における高いレベルの協力を実現すること,並びに自動車分野における国際基準の適切な適用を通じた適合性及び調和を追求することの重要性を強調した。

41 日EU首脳は,世界経済のグローバル化を考慮し,競争法の執行における協力の重要性の高まりを強調し,2003年の反競争的行為に係る協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定の規定に基づき,協力を継続する決意を再確認した。

42 日EU首脳は,情報通信技術における協力強化の重要性を強調しつつ,自由で開かれたインターネットがもたらす利益を強調し,共同公募やその他の手段を通じた国際的な共同研究・開発の促進を奨励し,日EUインターネット・セキュリティーフォーラムの成功と第一回共同研究事業の成功裏の開始を歓迎した。

43 日EU首脳は,とりわけ認可事業者制度の相互認証の実施を通じた,強化されたサプライチェーン・セキュリティなどの税関協力の分野における着実な進展を歓迎した。また,両首脳は,世界税関機構(WCO)が2012年6月に採択した,テロ対策を含む効率的かつ効果的な通関審査を目的とした事前旅客情報(API)及び旅客名簿記録(PNR)の利用に関する勧告に留意した。

44 日EU首脳は,治安,安全,石油依存,エネルギー効率,気候変動などの共通の挑戦に対処する協力を強化するため,運輸を主要な分野と見なした。日EU首脳は,双方が関心を有するこれらの分野における協力を強化することの重要性を強調した。日EU首脳は,航空分野における日EU関係を拡大する見通しを探求し,潜在性を深める必要性を確認した。また,日EU首脳は,公正な競争と公平な立場に基づき,国際海運市場に対する制約無しのアクセスに向けた動きの必要性について強調した。

45 日EU首脳は,新たに創設された都市開発政策に関する日EU対話を歓迎するとともに,日EU間で,持続可能で統合型の都市実践や政策をめぐる協力を強化する重要性を強調した。

46 日EU首脳は,日本又はEU域内から輸出される食品及び飼料中の放射線核種に対する制限措置が,モニタリング結果に基づき,貿易に対する不必要な障壁を解消するために,科学的に見直されるとの見解を共有した。

47 日EU首脳は,日本がEU加盟2ヶ国からの牛肉及び牛肉加工品の輸入禁止措置を2013年2月1日から一部解除したことを歓迎するとともに,これらの製品に対する現行の輸入禁止措置の解除を目的とするその他のEU加盟国からの申請について,科学的根拠に基づき日本が迅速な審査を進めていることを歓迎した。日EU首脳はまた,日本からの牛肉及び牛肉加工品のEU市場への輸出を許可するEUの決定を歓迎した。

48 日EU首脳は,第四回日EU俳句コンテスト,パートナーシップと人材交流促進計画,高等教育機関間の学術交流を含む人物交流における協力が相互利益,文化間の結びつきの強化,相互理解の促進をもたらしたことを,満足をもって留意した。日EU首脳は,これらの事業を継続し,教育・文化面での日EU関係を更に強化することが非常に重要であると考えた。この関連で,2014年2月あるいは3月に,日本政府は欧州から若手有識者及び研究者を招聘することを決定し,EU首脳は,この日本の取組を歓迎した。高等教育機関の交流は,2重学位制度の更なる整備や日EU共同の人的交流促進に向けた措置を含め,エラスムス+プログラムを通じて,さらに拡充することが可能である。それに加えて,マリー・キュリー・プログラムが,全世界の若手及び経験豊かな研究者を対象に,フェローシップを提供する。
 (了)

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Updated 2013.11.20

21st EU-Japan Summit, Tokyo URL