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日・EUアクティブ&ヘルシー・エイジングのためのシンポジウム開催報告

EU News 515/2012

2012/10/26

近年多くの国々が人口構造の変化と高齢者の増加に直面する中、それに伴うさまざまな社会的・経済的・技術的な課題に関する論議が盛んに行われるようになっています。このような事情を背景に、駐日欧州連合(EU)代表部、欧州経済社会評議会および日欧産業協力センターは、ヘルシーエイジングに関する政策や研究アジェンダについて議論するため、「アクティブ&ヘルシー・エイジングのためのシンポジウム」を10月9日、10日の2日間にわたり共催しました。

シンポジウムには、計41人の講演者が登壇し、まず日本とEUの政策決定者が高齢化社会をとりまく状況を俯瞰した後、ヘルシーエイジング研究にかかわる専門家が最新の研究状況や成功事例等を報告しました。2日間で合計約200人に上る参加者があり、このテーマに対する関心の高さを伺い知ることができました。

とりわけ2日目は、ヘルシーエイジングに関する研究・イノベーションが、どのように生活の質の維持・向上や長期にわたる健康に貢献できるかに焦点を当て、心臓病、後成的遺伝学、情報通信技術(ICT)、再生医療、加齢に関する社会的側面、ロボット工学といった幅広い分野にわたって講演が行われました。

このような多岐にわたる分野にもかかわらず、シンポジウムを通じていくつかの共通のテーマ――高齢化社会がもたらすコストや課題、新しい製品やサービスの消費者として果たす高齢者の役割、ヘルシーエイジングの分野横断的な性格から生ずる、自然科学、工学、社会科学、医学をつなぐ学際的研究の必要性、また異なる視点や経験を活用することを可能にする国際協力の必要性――が明らかになりました。

第1セッションでは、「併存疾患(複数の疾患を抱えている状態)のない生活」をテーマに発表が行われ、加齢にともなう疾患が個人や社会にもたらす影響、またそれらを軽減するための可能な施策についての講演、心臓疾患を悪化させ筋肉の退化をもたらすさまざまな要素を軽減するための、筋力や認知能力を向上させる対策、ヘルシーエイジングを形作る、感染、栄養、気温、社会経済的ステータス、ライフスタイル、両親の年齢といった環境的要因の考察、最後に体の器官を再生するための細胞シートティッシューエンジニアリングの講演が行われました。

第2セッションでは、ヘルシーエイジングへ向けた社会イノベーションの重要性に焦点を当て、欧州委員会のベルクーク氏がまず背景の説明とEUの施策の説明を行いました。その他、治療の一例として群馬県草津町での施策が取り上げられ、高齢者の虚弱度を全国や県の平均値より低下させることに成果を上げているという報告がありました。また別の講演では、工学やロボットが脳卒中患者の回復や高齢者の健康と体の機能の維持に効果をもたらしているという発表がありました。

第3セッションでは、いかにICTと情報社会研究が、とりわけロボットの導入によって、目に見える成果をもたらすかについての報告が行われ、四肢を補助するロボットスーツやユビキタスネットワークロボットの事例の紹介がありました。

最終セッションでは、保健研究の視点からの講演があり、糖尿病の発生を軽減するのに重要な役割を果たす茶の摂取についての興味深い報告、生体時計と睡眠パターンの重要性についての発表がありました。

最後に、来日中の欧州委員会 研究・イノベーション総局 のルドルフ・ストローマイヤー副総局長とシュヴァイスグート駐日EU大使が2日間にわたるシンポジウムの総括を行い、登壇者と参加者に謝辞を述べるともに、日・EUの保健研究のさらなる拡大の重要性を強調しました。引き続き行われた交流会では、(独)産業技術総合研究所(AIST)が開発し、既に多くの医療・介護施設に導入されているセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」のデモンストレーションも行われ、参加者の強い関心を集めていました。

プレゼンテーション資料

開会

  • 総務省官房審議官(情報流通行政局担当)谷脇 康彦 氏 (PDF)

 

第1セッション:ヘルシー・エイジング:併存疾患のない生活

  • 「多重不全研究に対するEUの補助」 欧州委員会研究・イノベーション総局医療研究課課長 カリム・ベルクーク氏 (PDF)
  • 「心不全を悪化させる併存疾患の研究」(EUプロジェクト SICA-HF) ベルリン・シャリテ医科大学(ドイツ)心臓病・悪液質研究教授 ステファン・D・アンカー氏 (PDF)
  • 「Prevention of Geriatric Syndrome」 (独)国立長寿医療研究センター研究所長 鈴木 隆雄氏(PDF)
  • 「加齢と長寿の発展的決定要因」(EUプロジェクト IDEAL) ライデン大学(オランダ)医療センター 分子疫学教授 イングリッド・メルンベルト氏 (PDF)
  • 「Cell sheet tissue engineering」-東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長 岡野光夫氏 (PDF) 

 

第2セッション:ヘルシーエイジングへ向けた社会イノベーション

  • 「ヘルシーエイジングのための社会イノベーション研究に対するEUの施策」欧州委員会研究・イノベーション総局カリム・ベルクーク氏(PDF)
  • 虚弱の予防とヘルシーエイジング:10年にわたる地域での活動とその成果 -東京都健康長寿医療センター チームリーダー 新開省二氏(PDF)
  • 「認知症予防のための革新的な中年期での介入」(EUプロジェクト In-MINDD)ダブリン・シティ大学(アイルランド)人間科学部講師 ケイト・アーヴィング氏(PDF)
  •  「豊かな高齢社会を牽引する健康工学イノベーション」 神戸大学教授 羅 志偉 氏(PDF)
  •  「脳卒中患者のリハビリのための新技術」ブレーメン大学(ドイツ)応用コンピュータ学教授、TZI・モバイル・ソリューション・グループ社 マイケル・ラオ氏(PDF)

 

第3セッション:ICTと情報社会分野の研究における成功例

  • 「アクティブ&ヘルシー・エイジングに関する欧州イノベーションパートナーシップについて」駐日欧州連合代表部 科学技術部 バーバラ・ローデ氏(PDF)
  • 「自力で生活するための多機能シャドウロボットシステム」(EUプロジェクトSRS) カーディフ大学(英国)レンシー・チウ教授(PDF)
  • (講演題目調整中) -(独)産業技術総合研究所 柴田 崇徳 氏
  • 「高齢者のための高度ロボットシステムと実生活のインテリジェント環境」(EUプロジェクト ROBOT-ERA) 聖アンナ大学院大学 フィリッポ・カバロ氏(PDF)
  • 「HALの先端性と高齢化社会を支える臨床応用」 –筑波大学教授 山海 嘉之氏
  • 「ライフサポートのためのユビキタス・ネットワーク・ロボット」ATR知能ロボティクス研究所 宮下敬宏 氏(PDF)

 

第4セッション:アクティブ・ヘルシー・エイジング:保健研究に関する主要な役割

  • 「食品因子による糖尿病予防のための新規分子標的」 神戸大学教授 芦田 均氏(PDF)
  • 「ヘルシーエイジングに役立つ24時間周期のリズムと睡眠の効用:時計遺伝子からの観点」 (独)産業技術総合研究所 石田 直理雄氏